61人が本棚に入れています
本棚に追加
「大半の村人達に罪はないの。先祖の決めた理に従ってきただけなのだから。けれど、彼らももう開放されるべきだわ。ここはもう楽園じゃない。澱んだ水槽なのよ。だけど、ジョゼフはそれを許さない。何としても妨害する筈よ」
「でも、俺はっ」
「どうかジョゼフを阻止して、カイザス。貴方にしか頼めないの」
チュセはカイザスの頬を挟み、額をつけた。
「私達は共に勇者よ。村と水龍様を救うの」
「俺はそんなものにならなくたって良い」
「生きてればどこかで会えるかもしれない」
「かもしれない事には賭けれない」
「頑固ね」
「お前こそ」
チュセはため息をつく。
「もう、時間切れだわ。水龍様がやきもきしてる」
「わかるのか?」
「実はツーカーなのよ。結構湖には通ってたの。ジョセフの目を盗んでね。奉賛の間もずっと話してたし…カイザスの事を愚痴ったり」
「…だとしたら、水龍の俺への印象はさぞ悪いものに違いない」
「それと同じくらい惚気けてたから大丈夫」
「あんなに冷たくしていたのにか」
「そんな簡単には嫌いになれなかったわ。カイザスってばどんどん格好良くなっていくし。それにほら、私って馬鹿だから」
最初のコメントを投稿しよう!