新しい「ふうふ」を創る仕事

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 僕のお父さんは新しい「夫婦」を創る仕事をしている。自宅で行われるその仕事は僕の馴染みのもので、毎日色んな人が入れ替わり立ち替わり訪れる。淡々と仕事をこなす父を尊敬しているし、父もやりがいを感じるとよく話してくれる。  「ごめん、できる限り仕事の邪魔のならないようにするよ。」  「うむ、外に張り紙もしているからそれほど身構えなくてもいいぞ。」 隣に座っている僕に笑いかけながらお父さんはそう言った。今日は夏休みの宿題『身近な人の仕事を調べよう』を完成させるべく、実際に僕も仕事場に同伴しているのだ。  10時になると早速チャイムが鳴った。  「いらっしゃいませ。さ、どうぞ奥へ。」 インターフォンをとり、お父さんが玄関へと向かった。  今日一番に訪れたのは二人の男性だ。二人が僕たちの対面に座るとお父さんは書類を差し出した。  「そちらにお二人の名前、希望の文字をお書きください。お決まりでなければ下の欄の該当する箇所にチェックをお願いします。」 そう言い終えると二人はさっそく書類に目を通し、記入し始めた。数分が経ち男たちは書き終えた書類をお父さんに差し出した。  「『正典』ですね。確認いたしますので少々お待ちください。」 希望欄に書かれた文字を読むとお父さんは「ふうふ辞典」と書かれた一冊の本を取り出した。『正典』の頭文字、まを口ずさみながらペラペラとページをめくってゆく。あるページで手を止めるとお父さんは頷きながら口を開いた。  「あー…こちらございますね。」 それを聞くなり二人は目に見えて肩を落とした。  「…漢字の候補をあげて頂けましたらこちらでお創りさせていただきますが。」 お父さんのフォローも虚しく、二人は首を横に振った。  「こちら、ふうふ証でございます。お間違えないか確認のほどお願いしたします。」 お父さんが差し出したふうふ証に目を通すと二人は受け取り、そのまま帰ってしまった。  「いやぁ、情けないところを見せてしまったかな?」 ハハっと頭を掻きながら困った様子で笑って見せた。  「そんなことないよ。」 僕は首を横に振り、答えた。
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