VRMMO

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VRMMO

 今日も今日とて、仕事に疲れ癒しを求めてゲームに浸る私は、恋人いない歴うん十年のOLです。  上京して社会人になれば、高校大学で成せなかった恋愛が出来ると、一縷の望みをかけていた頃がありました。  しかし、現実は非情。大体の人は恋人が既にいるか、私では逆立ちしても手が出せないイケメンしかいなかった。あ、ブサメン達はモブなので除外です。  私だって、男は外見じゃない中身だなどとモブで我慢しようとしていた時期もありました。ですが、ゲームオタクな私は画面越しの美貌に慣れすぎて、現実のモブ顔には軽い拒絶反応を起こしてしまい断念。  今現在も癒しのイケメンスマイルを画面越しに視て満足なう。ああ、何時か私の前に白馬じゃなくて、スポーツカーに乗った王子様(イケメン)が現れますように。  そんな無謀な夢を抱きながら過ごした、無駄な時間が少し流れたある日のこと。何とはなしに眺めていたツブヤイターのCMにとんでもない情報を見つけてしまった。  それはフルダイブ型マッシブリー・マルチプレイヤー・オンライン、通称VRMMOがリリースされるとのこと。  そこにはテイマーなる魔獣を使役して戦う職業が紹介されていたのです。その魔獣の中に人型が混じっていたのだから、あら大変。  私は確信しました。イケメン居ないなら育てれば良いじゃない。ゲームの中で、しかもハーレム可能と来たらもう。  私は、貯めていた貯金をはたいてゲーム筐体を買いましたとも。狭かった独り暮らしの部屋が更に狭くなりました。  フルダイブするには専用のゲーム筐体が必要で、そのお値段がなんと数百万。車が買えますね。  ソフトはそのゲーム筐体からネットワークを通じてインストール可能。基本無料のスマホアプリみたいなものか。  ネットで詳しく調べると、現実の時間よりもゲーム内時間は加速しており、たった数時間プレイするだけで、ゲーム内では一日が経過する。  自由な時間を余り取れない社会人には嬉しい知らせだ。画面越しの癒しの時間が、ゲーム内では数倍堪能できてしまうのだから。  平日は小一時間、休日は半日を当てられる訳ですね。無駄遣いできなくなったので、ショッピングを諦めれば問題ないです。ああ、さようなら新しい鞄と服。  ゲーム筐体に予め先行配信されているソフトをインストール。来るリリース開始日に備えました。有りがたいことに開始日は休日の午後。  朝から買い出しと家事を一通り済ませて、万全の体制。三十分前からキャラクター作成の為に別のプラットフォームが用意されているみたいで、多少のフライングが可能。  勿論、私は開始前にゲームを始めましたとも。少しでも早くイケメンに会いたいから。 「ダイブオン!」  音声認識によりゲーム筐体が作動して、私の意識は電脳世界に旅立ちました。
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