Epilogue:今沢 真理恵

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 店を去る前、晶子ちゃんに「お似合いですね。いつまでもお幸せに」と言われてしまった。  笑顔で「ありがとう」と答えたけれど。実は私にはヒカリさんに── いや、彼だけでなく『ひまわり』のみんなにまだ言っていないことがある。  私はそれをみんなに告げるべきかどうかを迷っている。  最近は、こうして海を見に来る理由の多くはそれ。特にヒカリさんと付き合うようになってからは、考え込んでしまうことが多い。 ♪  その日の夜。ピアノのあるカフェで待ち合わせた私達は『モアーズシティ』の上階にあるレストランで食事をすることにした。  ヒカリさんはレコード店で働くようになってから。特に店長を任されるようになってから勘が鋭くなったような気がする。  彼のご両親もレコード店を営んでいたらしいから。その血が覚醒して仕事以外のことでも鋭くなっているのかしら。  私の体調とか、気にしていることをよく言い当てる。  今日もそうだ。何か、俺に言えない秘密があるの?と切り出されてしまった。ちょうどいい機会だ。彼には話しておこうと思う。  私の家は女性のみが不思議な力を受け継いでいるのだけど、その力を継承した者達は、みんな短命なのだ。  私の母も、祖母も。そのお祖母(ばあ)ちゃんも、そのまたお祖母(ばあ)ちゃんも。みんな娘が成人する前に亡くなっている。  だとしたら私も……  そんな不安をヒカリさんに話すと、彼は嘲笑うように鼻を鳴らした。  人生百年とは言うものの。皆が皆100歳まで健康で生きられるわけでもないし。むしろ『死』なんていつも隣り合わせのはずだ。  一度死にかけた俺だからこそ言いたい。  そりゃあ、マリーちゃんに先立たれるのは悲しいけど。生きてりゃ誰だって死ぬんだし。遅かれ早かれ。  だから今、こうして最愛の人と横須賀の夜景を見ながらワインを飲んでいられるこの瞬間が大切なんだ。  ですって。  参りました。私みたいな若造は、いつまでたってもヒカリさんには敵わないんだろうな。 (本町ストア二号店のケースファイル-origin- 【神入光と父の遺品】 完)
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