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蒸し暑くて眠れない夜。
俺は壊れていたクーラーを睨みつけた。
布団が自分の汗でしっとりしている。
「はー、あっつ!」
ガバッと反動をつけて体を起こし、着ていた白のタンクトップを脱いだ。
近くにあった団扇を引っ掴んで自分を扇ぐ。
中で回っていた扇風機を強に変えた。吹く風はぬるい。
窓を開けてみた。
「全然風吹いてねぇー」
窓枠に座り、団扇で扇ぎながら外を見た。
高台になっている場所にある家の2階は、遠くまでよく見える。
寝静まった夜。
目に付くのは街灯の灯りばかりで、家の電気が点いているところはほとんどない。
たまに明かりが点いている部屋は、夜更かしでもしているんだろうか。
仕事か、勉強か。はたまた趣味に没頭しているのか。
あ、電気が消えた。
「……あっつい。ダメだ」
違うことを考えようにも、どうにも暑さが邪魔をする。
家族は寝ているだろうし、外に行くか。コンビニなら涼しいだろう。ついでにアイスを買ってこよう。
俺は箪笥から新しく白のTシャツを出して着た。下は今履いているハーフパンツでいいだろう。
ハーフパンツのポケットに、財布と家の鍵を突っ込む。
窓を閉めて扇風機を消して、部屋を出た。
なるべく足音を立てないように気を付けて廊下を歩く。階段を下りるときも忍び足を心がけた。
玄関でサンダルを履き、引き戸を開ける。
「行ってきまーす」と小声で言う。もちろん返事はないけれど。
外に出て戸を閉め、なるべく音を立てないように鍵をかけた。
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