12 魔王覚醒

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 12ー10 証  「あんたたちは、いや、あんたは、この俺の提案にのるしかないんだよ。さもなければ、あんたたちに生き延びる道はない」  俺は、言葉に魔力をのせて発した。  アンガスは、かすかに眉をひそめると俺に問いかけた。  「話だけはきいてやる」  「まず、あんたたちには、旧人類と和解してもらう」  俺が言うとアンガスは、せせら笑った。  「お前たち、旧人類と?」  「ああ」  俺は、頷いた。  「それから、異世界である『ダルダス』にいる古き神を引かせて欲しい」  「なるほど」  アンガスがうっすらと微笑んだ。  「それで?」  アンガスが俺に問いかけてきたので俺は、答えた。  「それだけ、だ」  アンガスが目を細めると考え込んだ。  「旧人類との戦いは、もう、意味をもたない」  アンガスの言葉に俺は、こくりと頷く。  「だが、未だにあんたと旧人類は、対立中だ。俺は、それをなんとかしてほしい」  「その話を飲む理由がない」  アンガスが言うので俺は、にやりと笑った。  「なら、このお前の子供たちを殺す」  アンガスが俺を睨み付ける。  ごうっと風が吹き付けてくる。  神圧に俺は、呼吸が一瞬止まるのを感じていた。  だが。  俺は、こんなことでは負けられないのだ。  しばらくしてふっと神圧が和らいだ。  アンガスは、俺ににやっと笑いかけた。  「いいだろう。条件を飲もう」  こうして神々と旧人類の戦いは終わりを向かえた。  アンガスが『ダルダス』の古き神々を引かせる代わりに、俺は、隷属させているミミアスたちを解放することになった。  そして、アンガスは、旧人類、すなわちこの『アロアナード』におけるエルフへの支配を解くことを約束した。  だが、これは、実行されることは難しいだろう。  それほどエルフに対するこの世界の差別は深かった。  だが、歩み寄ろうとすることが大切だしな。  こうして、あっけなく旧人類と神々とのいさかいは解かれた。  これからは、新しい時代がくるのだ。  俺とアンガスは、日を改めて正式な契約を交わすことにした。  その証しにアンガスは、自分のもう一人の娘であるナナルーを俺のもとに残した。  いや。  俺は、そんなの必要ないといったんだぜ。  それでも、アンガスは、ナナルーを残した。  
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