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 あたしは母さんや父さんと話し合い、中学生の頃以来着ていなかった浴衣を仕立て直す事にした。  母さん1人だけだと大変なので近くに住むお祖母ちゃんにも来てもらう。2人で浴衣の丈を直したりしてくれるらしい。来週の火曜日――今日から5日後には出来上がると言われた。花火大会の後で母さんやお祖母ちゃんには何かお礼をしないといけない。とりあえずは2人が好きなカステラを友達の里絵と買ってこようと決めた。 「加奈。浴衣はお祖母ちゃんに教えてもらうとして。ヘアアップやメイクはどうしたいの?」 「あ。自力でやると時間がかかっちゃうし。里絵に頼んでやってもらうよ」 「そう。里絵ちゃんは確かにそういった事は得意だしね」  あたしは頷いた。母さんと話した後、早速スマホで里絵に電話をかける。 『……はい』 「あ。里絵?」 『うん。あ、もしかして加奈?』 「そうだよ。ちょっといきなりで悪いんだけど。来週の土曜日って空いてる?」 『……来週かあ。土曜日は特に予定は入れていないよ』  里絵の言葉を聞いて渡りに船とばかりに言った。 「そっか。なら良かった。あのね、その土曜日にうちの近くで花火大会があるらしくて。あたし。和人と一緒に行くって約束してるの」 『ふうん。そうなんだね』 「で。里絵に土曜日になったらうちに来てほしいの。当日に浴衣を着て行くんだけど。ヘアアップやメイクをお願いしたくてね。それで電話をしたんだ」 『……成程。確かにあたし、そういうのは得意だけど』 「ごめん。やっぱり嫌だったかな」 『そんな事はないよ。まあ、あたしで良ければ。任せてくれたらいいけど』  ひとまずはOKをもらえたのでほっと胸を撫でおろす。その後、里絵にお礼として近所のケーキ屋のプリンをご馳走する事で交渉は成立した。  あたしは母さんに里絵からOKをもらえたと報告する。夕食を済ませたら課題に精を出すのだった。  翌日にあたしは母さんやお祖母ちゃんと一緒に浴衣の仕立て直しをやった。母さんは渋ったのだけど。お祖母ちゃんが「せっかくの機会だから」と言って急遽、あたしも参加する事になった。 「加奈。浴衣の裾を直したりは私やお母さんがやるから。後処理はあんたに任せるよ」 「え。あたし、お裁縫はそんなに得意じゃないんだけど」 「全く。いくら苦手といっても女の子に生まれた以上は。お裁縫が人並みにできなくてどうすんの。情けないったらないよ!」  お祖母ちゃんにピシャリと怒られる。あたしは正座で聞くしかない。母さんは苦笑いだ。 「さ。夢月(むつき)さん。たくし上げていた裾を直すよ」 「はい。お義母さん」  夢月――母さんの名前を呼んでお祖母ちゃんは針を手に取る。あたしは足が痺れて仕方なかったのだが。何とか、仕立て直すのを手伝うのだった。
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