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自己紹介
西明寺緋梨、28歳。女性。職業女優。座右の銘は「全てに感謝。全てに全力」
私の経歴を話すとなると、この一文がぴったりくる。
女優を目指すきっかけになったのは、幼い頃見た朝の連続ドラマ。
貧乏な女性が、舞台女優になるという夢のために、悪戦苦闘しながらも人生を歩んでいくヒューマンストーリーだった。
その中に出てきたヒロインである川瀬友里恵のキャラはもちろん、演じていた女優――乾藍子の演技やセリフ一つ一つの迫力に幼いながら感動したのだ。
「お母さん、私も乾藍子みたいな女優になりたい!」
「いい夢ね。お母さん応援するわ」
「うん!」
そこから私の夢は、女優になって朝の連続ドラマのヒロインとしてテレビに出演することになった。
それからというもの、女優になるため必死に勉強を初めた。
調べているうちに、女優の道は険しく、朝の連続ドラマのヒロインなんてかなり狭き門だということも分かった。
それでもドラマを見るたび、あそこに自分が立って演技したいという思いは消えることがなかった。
私の座右の銘「全てに感謝。全てに全力」
これは、ヒロインの朝倉友里恵の口癖。
人は1人では生きられない。
だから、すべての事に感謝をし、どんな小さな事でも全力でぶつかっていく。
そうすれば、夢が自分から目の前に舞い降りてくれると、彼女はいつも笑顔で言っていた。
私はその言葉を信じ、高校を卒業と同時に上京した。
運良く事務所にも所属することができ、後は経験を積み重ねていくだけ!
と思っていたのだが……。
『う~ん、ちょっと演技に迫力が足りないかな……』
『悪くはないんだけど……もうこう、ガツンっとくるものがあるといいんだけど』
オーディションに行くといつもこんな感じの評価を受ける。
おかげで、通行人Aのような台本に表記はあるものの個人名の無い所謂脇役と言われる役はよく回ってきた。
かといって、雑にやるなんてとんでもない。
数いる女優の中で自分を選んでくれたスタッフに感謝し、脇役でも全力で演じる。
そのお陰か、オファーが途切れるということはなく、今の今まで女優を続けることができていた。
「急に呼び出しって……なんだろ」
都内にある雑居ビルの3階。
窓に「ドリー ホープ」と書かれたオフィスが私の所属事務所だ。
本来ならドリームホープなのだが……窓に貼り付けてあるテープが取れてから直す人がいないので、そのままになっている。
そんなことを言うと全然売れていないように聞こえるが、一応有名ドラマに出演する俳優を輩出している事務所だ。
「えっと……時間合ってるよね」
呟きつつ、スマホを取り出し、事務所のアドレスから届いたメールを確認する。
『今日の13時に事務所に話があるから来てね~(*^^*)』
顔文字と共に簡素な1文が書かれているが、これが社長である巽紘汰から送られて来たものなのだからなんとも言えない。
私はため息を吐きつつ、階段を登っていった。
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