とんでも事件

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とんでも事件

それからドラマの撮影は、順調に進んでいった。 毎日忙しいけど、充実した日々。 今までのドラマ撮影とは比べられない重圧もある。 だけど、私は私の全力を出すだけだ。 そうして、あっと今に1ヶ月が過ぎていき、ドラマ撮影も半分に差し掛かろうとした時、事件が起きた。 それは、とある話の決定稿の台本をもらったときだった。 「え!?」 思わず確認してみると、どうやら戌亥さんがそっちの方が面白そうだからと書き換えたものが採用されたとか。 とはいえ、まさかこんな展開になるとは。 「ど、どうしよ……」 これまでいろんな役やシーンはやってきたけど。 流石に、ベッドシーンはやったことがない。 その夜。 「はぁ~」 「どうしたんっすか? 姐さん」 例のシーンがある台本片手にソファーに倒れていると、黄太郎くんに心配されてしまった。 「あ、ごめんね。ちょっとね」 「なんか、ドラマ撮影であったんすか?」 「あったというか、これから起きるというか……」 「?」 首を傾げている黄太郎くんに苦笑していると、顔の上に影が出来て……。 「大方、この台本が原因じゃないのか?」 ひょいと手の中にあった台本を取られた。 「ちょっ」 慌てて振り返ると、既に台本に目を通していた東海林の姿が映る。 その目がどんどん据わっていっているのは、気のせいじゃないだろう。 「お前、お前のファンとか言う男と寝るのか?」 「ちょっ! 言い方! それに演技だから!」 思ったよりもストレートに言われて、顔が熱くなる。 正直、そういう話はあまり得意ではないので避けてきた自覚はあるのだけど……。 まさか、こんなところで裏目に出るとは。 とはいえ、演技時に恥ずかしがっていたら元も子もない。 例のシーンを撮るのは数日後。それまでに緊張せずに全力で演技が出るようにならなくては。 「というか、お前って男と寝たことあるのか?」 「それはまぁ……いちおう」 とは言っても、学生の延長線上のようなものしかないのだが。 それを察したのか、東海林は少し考えた後……とんでもないことを言ってきた。 「なら、俺が手ほどきしてやろうか?」
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