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松本は元々同性愛者で、いわゆるゲイだったが、ホストに入れ込むとは思わなかった。大丈夫か?と思いながら席につく。
まずは乾杯、とか浮かれた松本がグラスを上げてレオとやらと仲良く話しをしている。腹減ってんだよ、オレ、と思いながら食う物なんかあるのかよ?軽く周りを見渡した時、離れた席のホストと目が合った。
肩に付く位の、軽くウェーブのかかった茶髪、目ヂカラがスゲーな、という印象の男。
つまんなそうにしてる、激しく場違いなオレを見てるのか?
好きで来た訳じゃねーから。
無言で反抗したが、でもまだ見てる。
やべぇか?と思って静かに目線を逸らすと、ダンダンッと離れた席から近づいて来た。
え?何々? オレ、怒られちゃうの?
渋々来るのは駄目なの?
ちょっとドキドキした。
スッと目ヂカラホストがオレの前に座ると、その後に付いて来た二人のホストが床に片膝を付いた姿勢でスタンバイをしている。
もう目が真ん丸、見た事の無い世界、ちょっと面白くなってきた。
「君の名前は?」
サテン地の黒スーツにダークレッドのオープンシャツ、胸ポケットにはシャツと同じ色のチーフ、こんなド派手な衣装を見事に着こなしている、茶髪の目ヂカラホストがオレを凝視して訊ねてきた。
人の名前聞く前に、テメェの名を名乗れと思いながらも
「名無しの権兵衛です」
真面目な顔をして答えてみた。
「ほう!権兵衛くんかっ!」
え?マジの名前と思ってる訳ねーよな?まさかな、とオレは目が泳いだ。
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