まさかの嫉妬?

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「松本。ほら、オレが一緒に、オマエの店に行ったヤツが言ってた」 「ああ、レオのお客様か」  ああ、と沈黙になる。 「彼はあの時いたのか」  そんな事は何でもない様な顔をしている柊木。何でもないのか?じゃあ何であの時泣いてた?  まさかっ!?  バッと柊木の顔を見た。 「何だ、津々理」 「いや、何でもねぇ」  その昔の男に、まだ未練あんのか?キスされて、嬉しかったりしたのか?  何だ、このモヤモヤ。  柊木も酔いが回ってきた様で、鰻屋の大将と愉しげに喋っている。大きな笑い声が狭い店の中に響いた。 「初めはいけ好かねぇ兄ちゃんだと思ったけど、面白いな、お客さん!」  大将とすっかり意気投合してる。 「夏に皆んな鰻を食べるから、夏が旬だと思ってるヤツが多いけど、鰻の旬は秋から冬にかけてだ。まぁ、今は養殖が殆どだからあまり関係ないけどな」 「やはり天然は全然違う!なぁ、津々理、違うだろう!?」  急に話しを振ってきたから焦る。確かに、今までで食べた鰻の中でダントツだ。 「ああ、ホントに。美味しい物が食べれて良かった。」 「なぁ、だから食べに行こうと言ったんだ!」  銀座の有名店だろ?ここじゃねぇだろ。そう思いながらも、満足気に笑う柊木に、思わず笑みで返した。    昔の男の事は…まぁ、いいか。  って、いいかも何も無ぇだろう、自分でツッこんだ。  旨い鰻をたらふく食べて、ビールも何杯飲んだだろう、二人してご機嫌で帰り道を歩いた。  人通りは殆ど無い。少し先を歩く柊木の背中を見つめた。鼻歌を歌いながら、少し千鳥足になっていた足元がふらついて転びそうになる。 「あっ、ぶねぇから」  急いで傍に寄り、柊木を支えた。 「ありがとう!」  頬を赤らめて、にこにことオレを見る。  変な気分になるじゃねぇか、「ちゃんとしろよ」と柊木の腕を肩に回して歩いた。 「今夜は最高だ!」  手を上げて言う、柊木の嬉しそうな声と笑顔に、ときめいちまった様な自分の胸を、グーで叩いた。
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