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「津々理、本当に有難う」
柊木の言葉に微笑みで返した。
すっかり体力が落ちている柊木は、風呂から上がるだけでシンドそうだった。
「ベッドに戻れ、髪、乾かしてやるから」
ドライヤーを持って部屋へ行き、ベッドに座る柊木の、湿った茶髪に指を通しながら乾かしていると、段々と柔らかいフワッとした髪になっていく感触が心地良かった。
半分程乾いただろうところで、ふと気が付く。
柊木が涙を流していた。
「どうした!?どこか痛いのか?苦しいか!?」
オレはびっくりして、慌ててドライヤーを止めた。
柊木は、静かに首を振る。
「今まで、こんなに優しくされた事が無いから。熱が出ている間もずっと看病してくれた。あまりに幸せで…すまない」
そう言うと、流れる涙も拭わずに小さく笑ってオレを見る。
オレはドライヤーを置いて、涙を両手の親指で拭うと、そのまま柊木の唇に自分の唇を重ねた。
「?」
柊木は状況が分からないようで、魂が抜けた様な顔でオレを見上げた。
もう一度、唇を押し当てて指で顎を引き下げ、舌を入れ、口の中で動かない舌に絡ませた。
それでも柊木は反応しない。
唇を離し顔を見ると、今にも零れ落ちそうな涙が瞳を覆っていた。
「柊木?」
その掛けた言葉と同時に、涙が溢れた。ボロボロと大粒の涙が。
「お、俺は…ね、熱で、あた、頭が、お、おかしくなって…しまったのだろうか?」
涙で声を詰まらせながら漸く話す。把握しきれない状況に戸惑っている様だった。
「柊木?もう熱は下がったぞ」
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