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そして、雑貨屋で買ってきたギフトバッグに描きあげた絵を入れて、柊木に渡した。
「約束してた絵、全快、にはまだ早いけど…お祝い…てのも変か…」
やっぱ、照れ臭くてモゴモゴした。
柊木は、目を大きく見開き、キラキラさせて
「本当に描いてくれたのか!」
と、ギフトバックを受け取る。
嬉しそうにバッグの中を見て、そろそろと絵を袋から出した。
一輪の花、ピンクのチューリップを描いた。
喜ぶだろうとは思ったが、これ程とは思わず、ちょっと戸惑う。うぉんうぉん泣く。柊木は、うずくまって泣きじゃくる。
どうしたらいいんだよ、かなり困惑して、とりあえず柊木の背を撫でた。
「あの…喜んでくれるの嬉しいけど、ちょっと大袈裟じゃねぇか?」
泣きじゃくりながら顔を上げた柊木が言った。
「ピンクのチューリップ、一本、絵は勿論素敵だが、津々理の気持ちなのか!?」
「?」
ん?何の事だ?オレにさっぱりだ、訳分かんねぇ。
どうやら花言葉で感動したらしい。そんな事、何も考えないで描いたから、複雑極まりねぇ。
ピンクのチューリップ
→ 愛の芽生え、誠実の愛
一本
→ あなたが私の運命の人です
だそうだ。マジか、知らなかった。
すぐに花言葉が分かる柊木もスゲーが、喜び方がハンパねーな。オレにしがみついて、まだ泣きじゃくる柊木、オレはどうしたらいい?
知らないで描いた、っつーのも何だし、そうだって言っても嘘だしな、どうすりゃ柊木を喜ばせられるんだ、と背中を摩りながら考えて、頭の中が高速回転した。
でも、
「正直、花言葉は知らないで描いた。でもそれ聞いて、この絵を描こうと思ったのは必然だったと思うぜ」
本当の気持ちだった。柊木を喜ばせたいとか、そんなん取っ払っても本当の気持ちだった。
それにしてもオレの答え、完璧だろ。
「一生の宝物にする。本当に有難う、津々理!」
鼻水をすすりながら顔がボロボロになってる柊木だったが、それはそれで可愛い、って、すっかり柊木にハマってんな、オレ。
そして元気に、店でオーラをばら撒ける程に全快した柊木。
今までとは違い、オレにべったりくっ付いて離れないコイツの世話を、変わらずにするオレ。
そして夜となく昼となく、オレ達は何度も抱き合い身体を重ねた。
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