895人が本棚に入れています
本棚に追加
/47ページ
恋人同士になる
そうこうして、オレ達は恋人同士になる。
柊木の世話をしながら、居酒屋のバイトを続けるオレの生活は変わらない。
「津々理、今日も仕事に行くのか?」
「ああ、なんで?」
オレの背中にビッタリとくっ付いて訊く柊木は、今日は休み。
「君を皆に見られるのは嫌だ」
「何言ってんだよ、誰も見てねーよ」
いや、滅茶見られてるけどな、と心の中で呟く。居酒屋がオープンキッチンになってからというもの、店長の思惑通り女性客がワンサカで、女が多いって事で男性客も増え、店は絶好調だ。
「じゃあ、俺は客として君の店に行こう!」
「は?駄目だ」
「何でだ?」
松本に、オレとオマエの関係がバレちまう、そう言うと「大丈夫だ」とオレの前に回り、可愛い顔して下から見つめる。
「そうだ、松本君をウチに呼ぼう!俺が熱を出した時に仕事を代わって貰っただろう、御礼をしなければ!」
いい事を思いついた、と言う顔で嬉しそうに柊木が言う。確かに、松本には何かしなくちゃな、とは思っていた。松本にオレ達の事を話せば、堂々と店に行けると思ったようだ。
あんまり気が乗らなかったが、それがいいか、と思う。
「じゃあ、今日は大人しく家で待ってろ」
そう言ったオレに口を尖らしながらも、分かった、と頷いた。
もてなす為、松本を家に呼ぶ。
タワーマンションの中と柊木の家を見て、山奥で暮らしてた青年がいきなりニューヨークのタイムズスクエアのド真ん中に連れて来られたみたいな顔をしてたけどな。
「シュ、シュウさん!」
その上、崇拝する柊木がいる。そりゃあ松本の顔ときたら、見ものだったぜ。
「津々理!何でシュウさんと一緒に住んでるんだ!? …… えっ!?」
しかも柊木とオレの関係を即座に察しやがった松本は、オレの事も崇拝した目で見てきた。
「津々理さんっ!」
いい心掛けだ。
最初のコメントを投稿しよう!