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「津々理っ!お前!シュウさんから名刺って!」
松本が興奮して立ち上がった。
「ん?津々理?本名かな?」
目ヂカラホストが、顔は松本に向けたまま、横目でオレを見た。
「いえ、源氏名です」
ニヤリと笑ってみせた。
この応えが激しくウケた様で、
「津々理権兵衛くん、是非また遊びに来てくれたまえ」
そう言うと席を立ち別のテーブルへと、オーラをバラ撒きながら移って行くホストの背中を親指で差して、
「アイツのオーラ、凄くね?」
「津々理っ!シュウさんになんて事を言うんだ!」
松本は泣きそうになって怒っていた。
どうやら『シュウ』というホストは、この店のみならず、界隈で有名なカリスマホストらしい。
指名料は目玉が飛び出る程らしく、と言っても、目玉が飛び出るのは人それぞれ基準値が違ぇーだろうとは思ったが、見る限り、何となく納得のいく感じはした。
奴の客は完全に指名してくる客のみで、一見さんは奴とは接する事が出来ないらしく、何度か来店してようやく指名が出来るとか。こうして初めての来店で、ましてや奴から名刺を貰うなんて事は奇跡に近いらしい。
ふぅん。
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