ずっと続く筈だった二人の毎日

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『今、店を出た』  オレが怒っているのは承知してるだろう、柊木は前もってメールを寄越した。玄関の扉が開いたと同時に、柊木の胸ぐらを両手で掴んだ。   「どういう事だよっ!ロンドンなんかオレは絶対に行かないからなっ!」  そう言って、掴んだ胸ぐらを軽く投げ離したつもりだったが、オレの方が力があるからか怒りが強かったからか、柊木が吹っ飛んで玄関の扉に打ち付けられた。 「わりぃ」  そう言いながら柊木の腕を持って、支えて立たせる。  柊木は何も言わない。  沈黙のまま、二人でリビングに向かった。  それでも柊木はずっと、何も言わずに黙ってオレではない、他の場所の一点を見つめている。  オレを見ない柊木が、漸く口を開いた。 「津々理、こんなに良い話はない。有り難く受けるといい」  それでも、オレの顔は見ない。 「行く訳ねーだろ」  オマエを置いて、とても行けねぇよ。  何処にも行かない、ずっとオマエの傍にいるって約束したじゃねぇかよ。  水を飲む為にキッチンに行き、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出した。 「オマエも飲むか?」 「津々理、こんなチャンスはきっと、もうないぞ」 「水飲むかって訊いてんだよっ!」  オレの質問に答えない柊木に腹が立った。 「しかし津々理……」 「行かねぇって言ってんだよ!これ以上この話すんな!」  やっとオレを見た柊木の目には、案の定、涙が溜まっていた。 「言ってる事と、顔が違うじゃねぇかよ」 「君の絵は本当に素晴らしい、俺だけが思っていたことではない、間違いではなかった」  涙を溢さないように、堪えて柊木が話す。 「柊木が喜んでくれるだけでオレはいい。柊木の為だけに描く」
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