自民党に買収される者たち

　モダンで格調高い東大総合図書館に見るからに調和した二人が本郷キャンパスのペーブメントを歩いている。しかし、頭の中身は同床異夢で対照的な二人はカップルだ。深窓に育ち世故に暗いが、学校の勉強には明るくて東大生になった真理(まり)に同じく東大生で貴公子の美鶴(みつる)は言った。
「前回の参院選の時（2019年7月）に札幌で選挙演説中の安部晋三（当時首相）さんにヤジを飛ばした複数の市民が警察によって演説会場から遠ざけられたことがあったでしょう」
「そんなことがあったの？」
「あったんですよ。それで当事者たちが表現の自由侵害だ！やじ排除は違法だ！民主主義に悖る気か！なぞと息巻いて国賠提訴してですね、札幌地裁は排除行為の多くを違法と認めて原告側の全面勝訴となる判決を下したのです」
「そうなの」
「ですからね、偉そうに言える立場じゃないのに安部元総理が民主主義の根幹たる選挙が行われている最中に突然の蛮行によって逝去されたって岸田さんは言うのですが、民主主義になくてはならない言論の自由も表現の自由も破壊しようとしている自民党の総裁がですよ、どうしてこんなことを敢えて言うか分かりますか？」
「何でかしら？」
「それはですねえ、山上容疑者が本当は統一教会のトップを消したかったのですが、それは無理という事で我が母を破産させ家庭を滅茶苦茶にした統一教会とずぶずぶの関係にあった安部さんにターゲットを絞って恨みを晴らすべく安部さんをお消しになったのに言論封殺の為に消したと見せかける為なんですよ。その証拠に安部さんの意志を継いで防衛費2倍にして軍拡して憲法改悪して緊急事態条項を盛り込んで中央集権化して益々民主主義に反する暴力的な全体主義且つ国家主義且つ軍国主義たる国にしようとしてるのに我が国は暴力に屈せず、民主主義を断固として守り抜くと殊更に矛盾したことを強調しておいて安部さんを統一教会と関係がなかったかのように将又、言論封殺するべきでなかったかのように将又、輝かしい功績があったかのように讃美して安部さんを支えた保守層への配慮を示す為にも自民党と統一教会の関係も有耶無耶にする為にも自民党政権を国民に肯定させる為にも葬儀を改めて国葬でやるって言いだしたのです」
「こくそうって何？」
「英雄に対する追悼式みたいなものですよ」
「ふ～ん。安部さん英雄なんだ」
「違いますって断じて」
「でも、お優しいオジサマって感じじゃない」
「だからって英雄とはならないですよ。確かに愛想が良くて結構人気がありましたけど、巧言令色鮮し仁でね、自分も妻も森友問題に関与してないと欺くべく公文書を無理矢理改竄させて官僚として使命感の強い赤木俊夫さんを苦悩のどん底に陥れ自殺に追い込んだのは、それを示す最たる例でして、統一教会の悪徳な霊感商法を警察の手から逃れさせる守護神になることによってもどれだけの被害者を出したことか、また自らの失政によってもどれだけの被害者を出したことか、全く国民の為でなく利権の為の政治をして日本を駄目にした伴食宰相なのでありますよ。これを国葬にするというのはちゃんちゃら可笑しいのでありまして言語道断なのでありますよ。横車を押すと言いますか、無理が通れば道理が引っ込むと言いますか、国民の大半が国葬に反対してるのに野党の国葬反対主張は国民の認識とずれていると言う茂木自民幹事長に代表されるように反社会的な統一教会に蝕まれる民主主義にそぐわないカルト集団たる自民党の暴走の始まりですかね。日本を危うい方向に導くように思えてなりません。ま、先の参院選で自民党が大勝した時点で失望してましたけど、大体、安部さんは岸田さんが讃美したように東日本大震災から復興させたのでなくてコロナ禍なのに自分の都合で復興五輪と称して東京オリンピックを無理矢理開催したのですけど、開催まで東京で建設ラッシュが起きて被災地の復興を妨げた上、岸田さんが讃美したように日本経済を再生したのでなくて金持ちばかりに金が回るように黒田バズーカを3回打って貧困層の底上げが出来ない儘、経済を活性化することは叶わず、ＧDPを水増ししなければならない位、減少させ、実質賃金を下落させたアベノミクスの付けが回って今の円安輸入インフレを齎すなど日本経済をズタボロにした上、岸田さんが讃美したように日米関係を基軸とした外交の展開で大きな実績を残されたのでなくてアメリカの傀儡になってアメリカを儲けさせてくれたからアメリカの要人或いは外交辞令でその他の外国の要人から褒められてるだけでプーチンさんには良いようにあしらわられ、北方領土問題を何も進展できなかったし、トランプさんにも良いようにあしらわられ、アメリカの兵器をアメリカの言い値で爆買いして日本の防衛産業を衰退させたばかりか日本を戦争に巻き込むリスクを冒して中国包囲網を敷こうとするアメリカに協力して集団的自衛権を行使できるよう安保法通称戦争法を制定してしまったのです。そして岸田さんが当然、触れなかった数々の疑獄事件を起こし、まだ福島第一原発事故処理と廃炉が済んでない中で南海トラフ大地震が起きることが近い将来確実視されているのに利権を守る為、原発再稼働しようとし、消費税を法人税減税の穴埋めに充ててるのに社会保障費に充ててると偽って上げて行き、おまけにアベノマスクを無駄に大量に作って配り余りを長期に亘って倉庫保管するにも莫大な税金がかかって、糅てて加えて東京オリンピックを開催するにも国民から税金を搾り取って食い物にするサイテーの政治家だったのですよ。それで、国葬も全額国費でやるって言うのですけど、国費っていうのは税金で賄っていましてね、世界各国から要人を招いて警備が大変だったり、迎賓館で御馳走しなきゃいけなかったり、交通費や宿泊費が嵩んだり、その他諸々で税金が何十億、下手したら百億も掛かって仕舞う訳ですよ。ですからお亡くなりになってからも税金を国民から余計に搾り取る訳です。全くサイテーですよね」
「言われてみればサイテーね」
「そんな方の葬儀を国葬にすることに賛成する人ってよっぽど無知か馬鹿か右翼に違いありません。況して安部さんを新札の肖像画になんて言う人は無知蒙昧の極右翼と言えるでしょう。極右翼と言えば、安部さんを擁護する御用タレント、御用ジャーナリスト、御用学者が沢山いましてね、テレビのワイドショーとかでコメントしてテレビ番組を嘘塗れにするのです。その一人の三浦瑠麗さんって知ってます？」
「彼女なら知ってるわ。だって私たちの先輩じゃない」
「そうなんですけど、自民党に買収されてますからね、この人、少しばかり美人であることを鼻にかけてる所為か底気味悪い薄笑いがトレードマークになってまして恐ろしいことに『戦前を見習って個人の感情より国家のこと考えなさいよ』と全体主義国家主義延いては軍国主義もろ出しで安部さんの国葬に賛成してましてね。安倍さんと統一教会の関係性が取り沙汰されていることに対しても、『本件は陰謀論の巣になりつつあります』と国民をミスリードするべくツイートしたのです。それに対し共産党の香西さんはリツイートして、『なぜ安倍氏と統一教会との関係を陰謀論などといって否定しようとするのか？』と反論し、『霊感商法などでとことん人を追い込む統一教会と自民党とのねんごろの関係の真相を明らかにする』必要性を説き、海外のメディアも安部さんの祖父の岸信介さんのことを盛んに取り上げて統一教会の日本支社が岸邸に隣接していたことや統一教会の創始者の文鮮明さんと岸さんが協力して勝共連合を発足したことなどを挙げ、祖父の代から深く関係のあった統一教会と安部さんの繋がりを指摘しているのに三浦さんは飽くまでも否定の態度で嘯くのです。しかし安部さんが統一教会の霊感商法を悪徳商法として捜査しようとする警察から守っていた所以から山上容疑者は統一教会の信者になって統一教会の霊感商法に嵌るなど統一教会に多額の献金をして破産した母親の所為で大学に行けなくなって家庭がメチャクチャになった、その恨みを晴らすべく統一教会トップの身代わりとして統一教会に最も影響力があったシンパの安倍さんをお消しになった訳ですが、『こういう事件が起きて因果関係として報じることは、安倍さんに責任の一端があったかのような、そういう印象操作になっている。而も政党のリーダーも含めて各所でそのようなことを言い出している人がいる。私はこれは非常に由々しきことだと思っている。事件の動機がそうであったということと、動機に何らかの正当性があるかのような言い方をするのはいけない。これは分けて考えなければならないのですが、日本人はこれができていない。因果応報的な報道は、犯罪者に加担するもの。彼の妄想に加担してはいけない』とフジテレの情報番組でコメントしたのです」
「凶行の動機を成す安倍さんと統一教会の関係を山上容疑者の妄想にしちゃったの？」
「そうなのです。日本メディアが政府に忖度して伝えず忖度する必要がない海外メディアが伝えてることを山上容疑者は概ね御存知だったようで岸さんが統一教会と関係があることを知ったから安部さんもそうに違いないとみて調べると、安部さんが統一教会の広告塔であり守護神であることまでお知りになったから復讐するべく凶行に及んだのに、その知識を妄想にこじつけてまで安部さんを庇おうとするのです」
「自民党からお金貰ってるから？」
「そうなのです。分かってくれました？」
「ええ。でも、何でみっくんはフェラーリを早朝にこそっとしか走らせないのか？そこが分からない」
「そう来ましたか、何しろ早朝にオープンにして走りますと、人がいなくて車が空いてて人目を気にせずノンストレスですいすい走れてエンジン音も排気音も風も気持ち良くて最高に楽しいですから」
「私だったらこれ見よがしに昼間とか夜間に走って人目を楽しんで優越感に浸るけど」
「フェラーリを見世物にして？」
「ええ」
「見世物と言えば、安部さんの棺を載せた霊柩車が見世物みたいになってましたね」
「そう、みんなリムジンみたいな霊柩車が通ると、手を振ったり拍手したりスマホで撮ったりしてたわ」
「まるで優勝パレードする野球選手に対するリアクションみたいだったですね」
「そう、頭を下げて手を合わせて拝む人はほとんどいなかったわ」
「戦前戦時中なら不敬罪になりそうなことです」
「でも、フェラーリで走ってそうされたら寧ろ嬉しくなるわ。だからねえ、みっくん、今度、ドライブに連れてって！」
「まあ、今は暑いですから早朝以外では夜中が良いかと」
「昼間でもエアコンつければ問題ないじゃない」
「僕はオープンで走りたいのです」
「そうなの、じゃあ、都心なら夜中でも良いわ」
「そんなに見られたいのですか？」
「そう」と言ってにやりとする真理を見て女性は虚栄心が鬼のように強くて見栄っ張りだからなあと美鶴はつくづく思い、この際だから安部元首相の葬儀が執り行われた増上寺の辺りをドライブしようと思った。
　当日、ライトアップされた東京タワーを中心にビルの窓明かりやイルミネーションや信号機や街灯やヘッドライトの光で彩られた都心の夜景を眺めながら夏の夜のドライブを実行すると、徒でさえフェラーリ８１２GTSは見た目がでかくて派手なのに音が猛獣の咆哮のように凄いから確かに街行く人々の視線を集めた。美鶴は真理が可愛いだけに満更でもなかったが、都心に星の光を全て取り去られたようにダークな夜空を突く全面金銀に輝く東京タワーが真正面に望めるブールバールを走行中、大喜びの真理を横目に真夏の電力需給逼迫を懸念し、何も東京タワーを全部光らせなくても良いのではないかと思った。更にはこんな短歌を詠んだ。星空の光集めて掠め取りばらまくが如き都心の夜景。これでは三浦さんの思う壺だろうと美鶴は思った。何となれば、地球温暖化に因る猛暑でエアコン使用量が過度になって電力需給逼迫気味になると、それを良いことに風力発電などないかのように原発の必要性のみ説くに違いないからだ。勿論、自民党に忖度してだ。一応政治学者という肩書があるのにモラルハザードを起こしてるのだな、この方もと美鶴は思うのだった。