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「あ。覚えてくれてます?嬉しいな。あ、申し遅れました。僕はここのオーナー兼店長をしています市木要二朗(いちきようじろう)と申します。前々から君の店のケーキが好きでね。実は良く通わせてもらっているんですよ」 「えっ!オーナー兼店長?そうなんですね。そ、それはどうも……(まずい全然記憶にない)あ、えと、あの、私は田所麻衣美と言います。まあ私は普通の平平凡凡な従業員で……お褒めの言葉、ありがとうございます。店長に伝えたらきっと喜ぶと思います」  にこ、と精一杯の社交辞令スマイルを浮かべつつ、何だかリラックス出来ない雰囲気になってしまい変な感じで背筋が伸びる。  フルーツタルトを頼みたいのに、何だか気が引けてしまうのはイケメンだからか、仕事上の繋がりを感じてしまったからなのか……チーズケーキは大好きなのだけれど、毎日食べるのは飽きてきたからこの店でフルーツタルト食べるつもりか?みたいに思われるのかなと思い、でもフルーツタルト売ってる店の人がチーズケーキ買いに来てるワケだからここはトントンではと頭の中の天秤が右往左往していた。 「田所麻衣美さん、ですね。そうだ、で、ご注文は?」
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