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「あ、ですね。ですよね。え―――と……」
もうそろそろ有希が来ないかなと、麻衣美は商店街の通路が広がる大きな四角い窓の方をちらりと一瞥した。そしてドキリと、愕然とした。
室内の蛍光灯の反射で、暗めの外よりも内側の景色がくっきりと見える。
自分の目の下のクマが、朝よりずっと酷く紫に浮かんでいた。
昼にメイクし直したはずなのに、もう―――――………
「どうしました?」
「あ、いえ。あの、あぁ……じゃあとりあえずこの、お店ご自慢のオーガニックカフェラテ、で………あっ」
ゴトンッ
目の前の御冷のグラスが倒れた。
麻衣美の指が咄嗟にその側面を叩いたからだ。
殆ど口をつけていなかったため、大量の水が勢いよくテーブルの上に流れ、ボタボタと床にその雫を落として行く。
「あっ!す、すみませんっ!」
「大丈夫ですよ。お召し物は濡れていませんか」
「いいです、大丈夫です。もう私、根っからのドジッ子で!いやもう子供じゃないけどそそっかしくて!大丈夫です服は。自業自得なんで……はあぁぁぁ、すすすすみませぇん……」
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