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市木はスタッフを呼び、ダスターとバケツを用意させると腰を屈め、手際よく自ら清掃作業を始めた。
「えっ!いいです。私、自分でやります。大丈夫です」
「もう終わりますよ。それよりこちら側のソファが少し濡れてしまいました。お友達と待ち合わせされてるんですか?でしたら他の空いている席に移動されては……」
「ちょっとぉぉぉ!麻衣美、何やってんのぉおお?」
「あ……っ、有希先輩」
「零したの?あれまあ」
爽快な高い金属音のドアベルを鳴らし一直線に有希が駆けてくる。
心配げな顔は、市木の丁寧な説明と共にすぐにホッとした表情になった。
「連れがご迷惑おかけしました。何かありましたら弁償しますんで、すみませんね」
私の頭をガシッと掴み、半ば強引に頭を下げさせる。まるで豪快なオカンのようだ。
「別にわざとじゃないんですよ?有希先輩。てか遅いです、来るのが」
「ごめんごめん、じゃあ今日はオゴるからさ」
市木の薦めにより二人は隣のテーブルに移り、そこで注文を取り直した。
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