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 男からスマホを盗み、ラインアプリに入って要二朗に映像を送信した人間こそが犯人だ。  映像にはコメントが一つ。 『あなたの大事なお姫様が、ブッサイクに生まれ変わるよ』  麻衣美の背に馬乗りになっていたのは、赤いワンピースの女だった。    顔こそ出ていなかったものの、犯人が誰かは言わずもがな明らかだった。  その映像を見た要二朗は、初めこそ強烈なショックを覚え発狂を疑うほどの大声を上げたものの、それからは自身でも驚くほど冷静になっていった。    要二朗はまず、自分の店に電話を入れ、急用が出来たので一日休むことを、声を震わすことなく伝えた。  それから。  スウ、と息を吸い込むとその映像の送信元の番号にメールを送った。  思惑通り、返答したのはミカコだった。  満足げな嘲笑の絵文字で答えたミカコに、要二朗は『何もしないでくれ!』と懇願の文章を入力する。  ミカコの高笑いが耳元で響くような感覚はあったが、要二朗の息は実際、一つも荒れていなかった。  「今から行く」という短い言葉を最後に送った後、要二朗は社宅のアパートに施錠をし、虚ろだけれども鋭さの光る目で自分のマンションへと足先を向けた。
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