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 警察に勘付かれる可能性も低く、食糧なども豊富にあることは分かっている。  映像を見た要二朗が警察に垂れこむことはまずあり得ない。  何しろ自分が疾しいことばかりなのだ。  それに恐らく、杉崎の死体をもう見たはずだ――――……  要二朗の頭の中は、麻衣美が杉崎と同じような目に遭わされないか、その恐怖しかないに違いない。  売春宿に投げ込まれ、随分と酷い目に遭わされて、ミカコにとって要二朗は悪そのものであって然りのはずだった。  けれど。  ミカコの中には、要二朗は最初の時のまま、甘い言葉を呟く気高い王子様のようなイメージがこびり付いていて、どうしても消すことが出来なかった。  それが幻想だと分かっていても。  優しい笑顔で、愛ある言葉を紡がれて、最高のセックスのもてなしを受けて。  全てが最高で、満たされていた。  あれほど天国な日々はなかった。  あれほど満ち足りた楽園はなかった。  実際は女たちを売春させていたのだから、王子様ではなかったはずなのだけれど。  どうしても憎めないのは、やはり恋して、心底惚れてしまったからなのだろう。
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