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駆け出して、エントランスに繋がる廊下に入った矢先、ミカコは胸に衝撃を受けた。
目線を下げれば、乳房の間に注射器のような鋭利なものが突き刺さっているのが見える。
「……う、うぅ………っ!」
途端に全身の力が抜ける。
眩暈がし、立っていられなくなり、ミカコはそのままよろけて床に倒れた。
そこに静かに歩いてくる一人の男。
その手には大型の銃らしきものがぶら下がっていた。
「よ、要二朗………」
麻酔銃だ、と分かった頃には意識が混濁していた。
意識が澱む中、ミカコはそれまで見たことが無い要二朗の顔を見た。
慌てふためいてくるはずだった男はとても冷静で穏やかな顔をしていた。
そしてその目は一切の迷いがなく、人間とは思えない程に冷ややかな色を湛えていた。
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