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 とぷん、とお湯の跳ねる音が聴こえると同時に、じわじわと身体が温まって行く。  ほんのり甘いハーブの香りが蒸気と共に鼻腔から脳へと吸い込まれる。    ぬるま湯より少し熱いくらいの絶妙な湯温。  何とも言えない心地よさに、気づけば全身が弛緩する。  あちこちの打撲痕は触れると痛いけれど、それでもこの湯船の中での微睡は格別だった。  まるで夢の中のような、蒸気で白んだ景色。  誰かに背後から抱き包まれているような安心感。  その証拠に、湯船の中だと言うのに、頭が滑っていくような不安定さが感じられない。  身体が、上も下も緩やかにだが、しっかりと固定されている……。  そして泡で満ちた湯船の中から、角ばった両手が現れたかと思うと顔や乳房に向かって伸びて来た。 「ん……え、えぇっ!?」  夢、じゃ、ないっ!!  茫洋とした意識の中、麻衣美は自分の状況に気づき、半身を起こそうとした。  が、それは背後にいる男の腕によって停められる。    麻衣美の裸体を背中から覆い被さるように抱きしめていたのは、要二朗だった。
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