61人が本棚に入れています
本棚に追加
4-7
とぷん、とお湯の跳ねる音が聴こえると同時に、じわじわと身体が温まって行く。
ほんのり甘いハーブの香りが蒸気と共に鼻腔から脳へと吸い込まれる。
ぬるま湯より少し熱いくらいの絶妙な湯温。
何とも言えない心地よさに、気づけば全身が弛緩する。
あちこちの打撲痕は触れると痛いけれど、それでもこの湯船の中での微睡は格別だった。
まるで夢の中のような、蒸気で白んだ景色。
誰かに背後から抱き包まれているような安心感。
その証拠に、湯船の中だと言うのに、頭が滑っていくような不安定さが感じられない。
身体が、上も下も緩やかにだが、しっかりと固定されている……。
そして泡で満ちた湯船の中から、角ばった両手が現れたかと思うと顔や乳房に向かって伸びて来た。
「ん……え、えぇっ!?」
夢、じゃ、ないっ!!
茫洋とした意識の中、麻衣美は自分の状況に気づき、半身を起こそうとした。
が、それは背後にいる男の腕によって停められる。
麻衣美の裸体を背中から覆い被さるように抱きしめていたのは、要二朗だった。
最初のコメントを投稿しよう!