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「強引に擦って取ろうとして傷がつくといけないからね、まずはお湯で顔料を浮かばせないと」 「あ、じゃあ……この顔料を取るために、お湯をわざわざ……?」 「そうだよ。僕がいなかったら、今頃君はもっと悲惨な目に遭っていたかもしれないよ」 「あ……」  そう言えば、意識を失う寸前、ミカコはキャンドルの炎を麻衣美の顔に押し当てようとしていた。けれど今、頬や瞼に触れてみて火傷の感触や痛みを感じないのは、その前に行動を防いだ何かが起こったということなのだろう。  恐らく、いや……要二朗が、ミカコから麻衣美を救ったのだ。 「すみ、ません……。勝手におうちに入って、その上助けてもらって……」  元々はここで拉致監禁されていたことが発端であり、要二朗に感謝する筋合いはないのだが、今の麻衣美の脳は、水面下で繰り広げられている至高のマッサージと入浴剤として使われているアロマの心地良さに骨抜きになってしまっていた。
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