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 これはレイプのようなものなんだから、正当防衛で、でも。  全身を撫でる優しい指が、手のひらが、その愛の深さを語っている。  いっそのこともっと乱暴に、暴力的に襲われたならもっと抵抗しやすいのに。  優しいから、大切にしてくれているのが分かるから、抗いにくい。  数分経ってもやまないキスは、一途な愛を象徴しているように思えた。 「愛してる……愛してる、麻衣美。良かった……僕のところに戻って来てくれた……良かった、本当に良かった……」  戻りたくて戻って来た訳じゃない。  だけど……。  この人は私のために、確かに人生を捧げている気がする。  私を手に入れるためには手段を厭わず、何でもやる。  心地良いセックスとなるよう、細心の注意を払って、心を尽くしてくれている。  それが、分かるから。  麻衣美の目の縁からポロポロと零れた涙に驚き、要二朗はキスを止めた。  真珠のような丸い涙は、困ったように伏せた赤い目から流れ落ちている。 「どうした?麻衣美………」 「……なんで要二朗さん、私をこんなに愛してくれるんですか?」
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