61人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……っ?」
「本気で想ってくれてること、ちゃんと分かります。でも、なんでそこまで。私なんか、普通の冴えない女子で、特に何か際立って出来ることもないし、なのに」
潤んだ瞳がまっすぐに要二朗の目を覗き込む。
その瞳を受けた要二朗は、すぐに言葉を紡げず、息を飲み込んだ。
一度視線を脇にずらし、それからすぐに顔を上げる。
「君は……その、僕の母に……似てるんだ」
「お母さん、に……?」
「うん…………僕の母は、誰より美しい魔女でね……僕の自慢だったんだ。いつも明るくて輝いていて、全てをポジティブに捉えて、誰にでもニコニコしていて」
「あ、あの……でも、私は魔女なんかじゃ」
「笑顔が」
「え……っ」
「そっくりなんだ。母と笑い方が。目尻の下がり具合とか、弓のように曲がる唇の形とか……それに、雰囲気。君の持つ空気には淀みがない。人を蹴落とそうとか、誰かが羨ましいとか、そういった負の感情が見えない。純粋に、健やかに過ごせている現状の日々に感謝し、それ以上の欲を出していない……」
最初のコメントを投稿しよう!