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「いやあああああああ―――――っ!!!!」
「お前みたいな奴にでかい乳房は要らないんだよ!不似合いだ……似つかわしくない」
有希の叫びも、麻衣美の叫びも、要二朗には届かない。
その刃を持つ手つきはリンゴや豚肉に向かって料理をしているその感覚と殆ど違って見えなかった。
「あぁああぁああぁ!!」
有希があまりの痛みに悶え、麻衣美はその姿に絶叫を続ける。
死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう死んじゃう。
有希先輩が有希先輩が有希先輩が有希先輩が有希先輩が。
私のせいで。
大切なものを失う恐怖、動けない自分の無力さ、手を伸ばしても、届かない。何も出来ない。
でも、諦めることなんて出来ない。
指をくわえて見ているだけなんて。
『念を飛ばすのよ』
その時、麻衣美の脳に、聞き覚えのあるクールな女性の声が響いた。
そして。
脳より先に、身体が理解した。
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