4-11

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 ぐるぐると舞う意識、色が消えて、白黒が混濁した視界。  もう何も抑える必要もない。  とにかく、愛する人を、助ける。    麻衣美の身体は弛緩し、その場にドッと倒れた。  それは傍から見れば、失神して見えただろう。  けれど、実際は違った。  有希の右乳房の周りを一周したナイフは、その刃先を中央に向け、完全な肉の分離を試みていた。  有希は血走った目を天井に向け、荒い息を吐くも、もう抵抗する力を出せずにいる。 「ようし……もう少しだ」  要二朗がほくそ笑んだ、次の瞬間。  要二朗の首元に、冷たい何かが触れた。  それは女性の小さな手のように思えた。 「………え?麻衣美?じゃ、ないか……」  見上げれば麻衣美はベッドの上で気絶して倒れている。  他に人の気配はない。  あるはずもない。  だとしたら。  背中にある赤黒い気配は、誰の気配なのか。 『おぉおおおおおおお…………』  振り絞るような声に現されているのは、圧倒的な、恨みの感情。  低いけれども、喉仏のある男の低さとは違う。  これは、女性の声。  地を這うような、くぐもった不快な声。 「な、だ、誰だ………」
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