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視界に入る麻衣美はベッドの上に倒れたままだ。
このままでは―――……。
胸から吹き出す鮮血の量に、有希は自分の死を覚悟した。
その時。
「……ここか?ここだな!」
玄関の扉の向こうで、何やら中年男性たちの言葉のやり取りが聴こえた。
「すみませーん!立花署のものですけどもぉ、市木要二朗さんのお宅で間違いないですかねえ?ちょっと警察に通報がありましてぇ、良ければ確認を……、あれ、開いてるなこのドア。市木さあん、いらっしゃいますかぁ………と、うっ!!」
その声は、部屋の奥から流れてきた異臭に断ち切られた。
甘ったるい香りの中に、明らかに死臭が混じっている。
背筋が凍るような悪寒を感じ、駆けつけた二名の警官は、意を決して中に踏み入ることにした。
「市木さぁ~ん?ちょっと、失礼しますよぉ……」
一歩ずつ、疑惑は確信に変わっていく。
この部屋は異常だ。真人間の住む空気ではない。
通報内容は『女性が監禁され、殺されている可能性がある』というものだった。
初めは悪戯かと思ったが、確認に出向いてみて、すぐにそれが虚偽でないような心持に変わった。
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