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リビング奥、マゼンタピンクの緞帳風カーテンの向こうは、一際濃厚な甘い花の香りと腐敗臭で澱んでいた。
強烈な異臭に鼻を押さえなければ進めない。
曲がりそうな鼻と格闘しながら、警官たちはその場に踏み込み、そして固まった。
あったのは、壮絶極まりない光景だった。
ベッドの上に、全裸で突っ伏している若い女性。
ベッドの足側の椅子に、全身を刻まれた女性と思われる肉塊。
ベッドの下に、片胸をほぼ切開されて瀕死状態の若い女性。
そしてその女性の上で、全裸で絶命している男性。
男性の身体は、喉元から胸、腹、四肢など全身に紫やピンクの手形が見られた。
それは男性を死に至らしめた圧迫痕であった。
それから数分後。
パトカーのサイレンよりも多く、救急車のサイレンの音がマンション周辺をけたたましく覆った。
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