4-11

5/5

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/335ページ
 リビング奥、マゼンタピンクの緞帳風カーテンの向こうは、一際濃厚な甘い花の香りと腐敗臭で澱んでいた。  強烈な異臭に鼻を押さえなければ進めない。  曲がりそうな鼻と格闘しながら、警官たちはその場に踏み込み、そして固まった。  あったのは、壮絶極まりない光景だった。  ベッドの上に、全裸で突っ伏している若い女性。  ベッドの足側の椅子に、全身を刻まれた女性と思われる肉塊。  ベッドの下に、片胸をほぼ切開されて瀕死状態の若い女性。  そしてその女性の上で、全裸で絶命している男性。  男性の身体は、喉元から胸、腹、四肢など全身に紫やピンクの手形が見られた。  それは男性を死に至らしめた圧迫痕であった。  それから数分後。  パトカーのサイレンよりも多く、救急車のサイレンの音がマンション周辺をけたたましく覆った。
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加