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見舞いの許可が下りた当日、麻衣美は無理を言って店を早上がりし、ダッシュで医療センターに向かった。
静謐に沈んだ病棟の廊下を、胸が張り裂けそうな気持ちで進んだ。
あの時、途中から……麻衣美の意識は飛んでしまっていた。
けれど要二朗が有希の乳房にナイフの切っ先を入れた所は見ていた。
その後どこまで刺されたかなんて……考えたくもない。
とりあえずは命の危機は越えた。
それだけでもう、何遍も神様に土下座して感謝した。
麻衣美自身も背中を中心にあちこち打撲痕があり、背骨の幾つかは骨折やヒビが見つかった。けれどこれは、簡易のコルセットで何とか出来ている。
自分のアパートに戻り、普段の生活に戻っていた。
でも。
有希がいなければ、完全には元の生活に戻れない。
ナースセンターで教えてもらった部屋番号に到着し、ドアをノックする。
「あのぅ、お見舞いに来たんですけど、入っていいでしょうか………」
「ああ、麻衣美?いいわよ。入って来て~!カモ~ン!」
「!!」
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