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何かに怯えるような、恐怖に怯える女性たちの声。
強盗?違う?まさか、じゃあ。
有希は店の奥の控室のデスクから立ち上がり、騒ぎのするサービスフロアの方に出向いた。
「…………ミカ、コ……?」
先日やって来たミカコに店内が騒然となったことは記憶に新しい所だが、今回はそれに輪をかけてミカコは異質だった。
異質。それとも、異常。
彼女の姿は毒々しいオーラに包まれていた。
ワインレッドのワンピース姿はどこか朧で、靄がかかったようだった。
見かけは最初の来店時よりはマシだが、とにかくその気配は異様で、色で言うならどす黒い赤であった。
直感で有希は、これは生霊状態のミカコだ、と思った。
あの麻衣美のアパートで最初に見た女。その時の印象と酷似している。
となると彼女はなぜ、ここに生霊を飛ばして来たのか。
嫌な予感がして、有希は背筋を強張らせた。
けれど、聴かなければならない。
「キャアアアアア!!」
「落ち着いて下さい、お客様!大丈夫です。お客様たちに危害は与えませんので!」
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