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店から出たくとも、レジと出入り口のちょうど中間に現れたミカコのおどろおどろしい姿に、客の誰もが席から立てずにいた。
殆どが若い女性たちだ。
見える人もいれば、見えていない人もいるようで、友達や仲間などと肩を寄せ合い震えている。
店長や里奈、それに他のスタッフも完全に硬直していた。
有希は頭を抱えながら、客に声をかけ、そして自分はミカコの正面に立った。
「………何の用、ミカコ。麻衣美は今どこ?」
俯いて黒髪で顔を隠しているミカコは、ハア―――――ッと、深く長い息を吐いた。
ここに発現しているのも必死な様子だ。
プルプルと震える指が、ゆっくりと窓の外を指差した。
そこには遠景に、あの要二朗の高層マンションが見えている。
「えっ!?まさかあそこ?ついこないだ麻衣美を奪還したのに!?アンタあそこに麻衣美を連れて行ったの?……要二朗を呼びつけるエサにしたのね」
なぜそんなところに、という所で言葉に力が入った。
通常のミカコであれば、冷笑するか、小馬鹿にする発言で返すところだが、今回はピクリとも顔の筋肉を動かさない。
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