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「えっ?え、えぇっ!?」
頭痛のやまない頭を軽く振り、有希は一つ、深呼吸をした。
そして窓の外に見える、モスグリーンとアイボリーのデザインが特徴的な高層マンションを睨みつける。
「麻衣美を助けに行ってきます」
「えぇっ!?」
「店の営業車、一台貸して下さい。そして、警察に通報をお願いします。里奈、店長と一緒にやってあげて」
「あ、は、はい……っ!」
恐怖でレジ下に屈みこんでいた里奈だったが、有希にはそのお尻の半分が見えていた。
有希からの声掛けに直立し、里奈は苦笑いする。
「通報……で、でもなんて言えば」
「あの高層マンションの最上階で、人が殺されたって目撃証言があるってでも言えば。部屋の所有者は市木要二朗。カフェ『Green・Alter』のオーナーよ」
「あ、わ、わっかりました!」
「じゃ、よろしく」
そして有希は店内から駆け出した。
駐車場に向かう途中、近くの工事現場から、転がっている木材の欠片を拾って。
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