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麻衣美は時間の都合のつく限り、毎日朝でも昼でも夕方でも病院に顔を出し、有希を見舞った。
有希の胸の痛みは日に日に良くなり、リハビリを始めると持ち前のファイトですぐに体力を取り戻した。
「あと一週間で退院して良いって」
「わあ!本当ですか?」
「うん。もう通常歩行出来るしね。だいぶ固形食も食べられるようになったし、問題ないわ。まあ痛むのは仕方ないわ、これもまぁ、慣れるしかないでしょ」
「やっぱり痛い、ですか」
「そりゃまあ、こっちの胸殆どグルッとやられちゃったからねぇ。切断された神経もあるし、感覚がないような気もするわよね。でもまあ、命あってこそだから、ね」
「………そぉですか」
こんな時でも、有希は弱音を吐かない。
元々そういうポジティブ思考の人だ。
本当は痛いし、辛いと思う。
もし自分の胸がそんなことになったら、どれだけショックを受けるか、もう言葉になんてならないくらいだ。
考えただけで、涙が滲む。
「なんで要二朗さん……こんな酷いこと……」
「そりゃアンタを私に取られたのが気に食わなかったんでしょうよ」
「でも、だからって」
「いいのよ。もう考えなさんな。生きてるんだもの。仕事にも復帰できる。それで合格よ。それにアンタ、アタシを助けたでしょう……?あの時、あの男の首に現れた手……あれは」
「え……?」
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