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「そうです。三十代……行って四十代くらいの、物凄い美女、美魔女でした。今思うと要二朗さんの顔立ちにちょっと似てたような気もします」
「へえ……」
肩までの緩やかなパーマ、グラマーで妖艶な身体。パープルのアイシャドーに、真っ赤なラインのルージュ。けれどその笑顔は柔和で癒し系だった。
あれはきっと、要二朗さんのお母さんなんだろう。
確証はないけど、なぜかそんな気がする。
そして彼女はその後こうも言ったんだ。
『この子は私が責任を持って連れて行く。あなたには迷惑をかけたわね。アストラル体の分裂が起こっている。非常に強いストレスを受けたために、あちこちにピンクの指紋となって飛び散った残像が見えるわ。これから少しずつ統合していかなければならないわね……。本当に申し訳ないわ。おわびと言ってはなんだけど、少しだけまじないをさせてもらったわ。あなたが今後、また想う人以外に暴行されないように……あなたの一番邪念が強かった瞬間を利用したまじないよ……でも、その男だけでなく、あなた自身も驚くかもしれないから、あなたは後ろを見ないようにね……』
想う人以外に暴行されないまじない……。
そんな変わったまじない、あるんだろうか。
「どうしたの?ボ―――ッとして」
「えっ?あ、いや、何でもないです」
「悩み事?まああの事件から間もないし、まだまだ普通に、呑気に何も考えずに生活するって感じには……ならないわよねえ」
「はい……まあ」
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