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この数ヶ月、春から始まった指紋騒ぎから、あまり落ち着いて眠れる日がなかった気がする。クマも結局いつも目の下に居座り続けた気がするし、最早ペットみたいに当たり前に常態化している………。
「麻衣美、ここにおいで」
半身を起こしている有希の腕に引き込まれ、麻衣美はグラつきながらその胸に飛び込んだ。乳房に触れたことに気づき、思わず身を反らせようとするが「大丈夫」という温かい声がその身体を抑える。
個室とはいえ、ずっとこうしているのはまずいだろう。
ここは病院で、いつナースがやって来るかわからないのだ。
けれど有希本人は、そんなことを一向に気にする素振りを見せない。
「ゆ、有希先輩……う、嬉しいんですけど、ここではまずいです。ちょっと離れます……」
胸に振動を与えないようにと気遣いながら、身体を起こし、ためらいつつ顔を見上げる。
その瞬間に、有希の唇が麻衣美の唇を覆った。
「んん………っ」
逃げようにも、頭を手でロックされている。
いけないと思いつつ、久しぶりのキスに脳内が瞬殺で蕩けていくのが分かった。
熱い舌先が弄ぶようにグイグイと入ってくると、全身が快感で痺れてしまう。
「ま……ダ、ダメ、ですってば」
このままでは力が抜けて帰れなくなってしまう。
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