6-2

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 ある日、大学から帰宅してみると、玄関に男物の革靴が置いてあった。  上がって見れば、キャッキャと楽しそうな、小鳥の囀りのような母の笑い声。  そのそばに、見慣れぬ男がいた。  母が五十代初めとして、男は確実に三十代半ばで、その歳の差は明らかだった。  嫌な予感を肌に覚えながら、麻衣美は二人の前に顔を出した。 「ただいま―――……」 「あ、麻衣美ちゃん、お帰り。こちらはね、桟ヶ嶋盛章(さんがじま もりあき)さん。お母さんの仕事場の同僚でね、最近、その……お付き合いするようになったの」 「………はっ!?」  ほんのりと頬を赤らめ、キャッと笑ってハートを飛ばす母とは裏腹に、麻衣美は背筋に氷の剣を突き刺された気持ちになった。  母の恋人?この、若い男が……?  目を合わせたくない、と最初から本能が言っていた。  その目が、合わせるまでもなく、麻衣美が登場した初めから身体を舐めるように見つめているのに気づいていたからだ。  この人、何かおかしい。
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