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麻衣美が住んでいた家はド田舎の旧家で、鍵こそありはするものの、本当に昭和時代のくるくる回すレトロキーだった。実際かかっているかも怪しいため、夜は玄関のガラス戸につっかえ棒をして、外側から開かないようにして眠っている。
大学生だった当時、突如始まった母の恋人との同居生活で、麻衣美は気分休まらない日々に疲れを感じていた。
大学まではバスで四十分かかっている。
月のバス代はバカにならなかったし、このような窮屈な同居生活が続くのなら、大学周辺でバイトしながら寮生活の方がマシだとも思った。
聴けば桟ヶ嶋の歳は三十四で、母とはちょうど二十違い。
麻衣美とは十四の歳の差があった。
笑うと目が線になるタイプの細目で、比較的穏やかな性格、あれこれとよく気遣って動くタイプだが、麻衣美の目には全てに『よいしょ』感が漂って見えた。
本音では何を考えているかが掴めないが、人当たりの良い人、という印象だ。
ご近所にも積極的に挨拶に出回り、既に仲良く話している様子を見れば、社交性や礼儀正しさもあるし、母が頼りにするのも分かる気がする。
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