6-5

2/3

62人が本棚に入れています
本棚に追加
/335ページ
「……ちょっと店長!何を勝手に……」 「いいじゃないか。いろんなことがあったんだ、たまにはゆっくりご両親に甘えて、リフレッシュするのも良いと思うよ!」  店長の気の利いたコメントに、母は満面の笑みを浮かべ、じゃあこの日からこの日までと、スケジュール帳を開いて予定まで立て始めた。  顔面蒼白な娘のことなど全く気づきもせずに、店長は母に合わせ「はいはい、了解しました」と勝手に日程まで決定していく。 「いや、いい。私、いかない。帰らないから」  つい、本音が口をついた。  行く訳にはいかない。絶対行きたくない。  それが思わず零れてしまったのだ。  しかしそれは、豆田店長の気に障ってしまった。 「いかんな、田所くん。あんな凄惨な事件に巻き込まれて、ご両親がどんなに心配したか……若い君には分からないだろうけども。いろいろ家庭内事情はあるかもしれない。けれどこれも良い機会だ。ゆっくりとした気持ちで腹を割って話してみるといい。君ももう大人なんだだから、親孝行を考えた行動をしなきゃいけないよ。今の君があるのは、ご両親のおかげなんだからね」 「え、いや、でもその、私の本当の父は他界してて、ですから」
/335ページ

最初のコメントを投稿しよう!

62人が本棚に入れています
本棚に追加