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麻衣美の実家は古く、築百年以上の旧家であって、お風呂は家から短い渡り廊下で繋いだ離れにあった。
子供の頃は、薪を焚いて沸かしていて大変だったが、今はガス湯沸かし器を導入している。出入り口の扉は家の玄関同様、鍵など無いのも同じで(一応あるのだけど)つっかえ棒で閉めるような感じだ。
久々に入る実家のお風呂は、どこか年季の入ったかび臭さを感じつつも、小窓からは裏山の緑が覗き、適度な採光でまるで温泉旅館の貸切風呂のようだった。
棚の籠に脱いだ衣服を入れて湯船に足を入れてみれば、丁度良い湯加減で自然と顔がほころんでしまう。
ちょっと大きめの家族風呂サイズなので、足を優に伸ばすことが出来た。
「はぁあ……気持ちいぃ~~!!さぁてっと!」
そう言うと麻衣美は、浴槽の縁に置いていた小瓶に手を伸ばした。
持ちこんだのはアロマオイルが入った小さなガラス瓶。
気分の晴れない帰省になるかもと思い、自分のテンションを上げるために持参したものだ。
湯船に数滴、オイルを垂らすと、たちまち爽やかな柑橘系の香りが浴室内に広がった。
「おぉ~!やっぱりいいねえ!ライムを選んで正解だったぁ!ひゃあ~元気出る~!」
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