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「……ずっとずっと、君だけを見てきたのに……正直言うと、君に近づきたくて君のお母さんに近づいたのに……残念、残念。すぐに出て行ってしまうし、戻ってこないし。この何年かでだいぶフラストレーションが溜まっちゃったよ……」  色褪せた青のタイルが貼られた床に、ゆっくりとその足が進む。  濡れた足の裏が、ぴちゃ、ぴちゃ、と音を立てる。  開かれたガラス戸の奥、出入り口の扉は難なく開錠されていた。  ここにずっと住んでいるのだ、あんな簡単な鍵などいくらでも作る時間はある。  気を抜きすぎた、と後悔した。  けれどもう後悔先に立たず、妖怪ぬらりひょんのような男は、既に至近距離に迫っている。 「麻衣美……ネットニュースで見たよ。監禁されてたんだって……?暴行って、レイプってことなのかな……許せないな、そんな男……麻衣美はとびきり可愛いからね、仕方ないんだろうけど……」 「来ないで!」  モサいグレーのポロシャツに、よれよれのチノパン。  股間が濡れているようにも思えるのは、覗き見してるうちに一度発射したということなのか。  吐き気がする。  麻衣美は湯船に首まで沈め、全身を見られないよう身を縮める。
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