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    怨霊は、私の化身。  私の分身。  それならば、消したいならば  自分でどうにかするしかない。  要二朗の母がどうこうだからじゃない。  自分のことだ。  自分で片付けなければならない課題だ。  私は私を強くし、私の中の弱さと向き合い、傷を浄化しなければならない。  そうすることによって私はいつか、傷ついて散らばった魂のかけらである『ピンクの指紋』を拾い集め、自分のうちに統合していくことが出来るのだろう。  私に出来る最善で、私は自分の罪を償うしかない。  これ以上の罪を重ねないよう努めるしかない。  夕陽にキラキラ七色に反射して光る、透明なガラス瓶にはまだたくさんのオイルが入っている。  一滴だけ手首の上に乗せると、爽快な芳香がふわりと薫り、麻衣美は涙を滲ませて静かに微笑んだ。  幸せな時間は、輝く未来は、望めば自分で掴むことが出来る。  それは深い闇や大きな傷を抱えていても、同様に。 了。
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