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 麻衣美より二つ年上の有希は同僚だが、単なるスタッフではなく準店長で正社員である。新店が出来れば店長に宛がわれるポジションであり、本当は準店長ときちんと呼ぶべきなのだが、高校で先輩後輩だったため、そのままの呼称で呼んでしまっていた。  歩く姿もよろよろと、どうにも頼りない麻衣美の腕を掴み、有希は洗面台に取り付けられた鏡の前に彼女の首を突き出した。 「わあ~!マジで酷いぃ~!」  鏡面を覗き込み、自分の顔の悲惨な実態を把握した麻衣美はバッグからメイク直しシートを取り出し、拭き取って洗い流した。  もこもこのタオルハンカチで軽く水分を取って顔を上げると、鏡の向こうに立つ有希が突き刺すような目線で見ていることに気づく。   「えっ、何……」    躊躇する間もなく、有希はグイッと麻衣美の顎を掴み上げた。その大きなアーモンド形の瞳が舐めるように隅々まで麻衣美の肌を凝視する。    
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