おもかげ

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ヘッドライトに照らし出される此の道の先には、いったいどんな未来が待っているのだろうか、 曲がりくねった山道の脇には、 生い茂る木々の枝が幾重にも重なりあって 遠く先を望む事ができない。 灯り一つない峠道を越えると、 やがて景色が開けて湖の畔に辿り着いた。 十三夜の淡い月灯りが湖面に映えて、辺りは静かな夜の帳に包まれている。 エンジンをかけたままエアコンの温度を緩めて、 サイドシートで眠る彼女の横顔に、 そっと口づけをした。 「着いたよ」 『えっ、何処に?』 夢うつつな眼差しで僕を見上げた愛しい面影 「花火を観に来たよね」 『あーぁそうだったね』と微笑む彼女は、 カーラジオから流れる80年代のバラードに心を奪われた。 『懐かしい、ボリュームを上げてよ』

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