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すこしでも。おまえを喜ばせたかった。おまえを癒したかった。癒せる相手になりたかった。
気持ちを伝えるのはいつでも難しい。仮に――おれが、実姫に告白していたら、どんないまが、待っていたのだろう。いや、考えても無駄だ。考えること自体が……失礼だ。なら、忘れる他、あるまい。
「……うし。いい味」お玉で味噌汁の味見をして、微笑んだ。かつお節からとっただしがいい味が出ている。文句なし。いつかこんな機会もあろうと、料理の腕を磨いておいてよかった。
「お風呂……、ありがとうございました」
振り向いた。そこには、……ぶっかぶかのシルクのパジャマを持て余すように着こなす、おまえの姿があった。正直に、胸が――ときめいた。
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