2. 邦楽部に入部します!

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 翌日の放課後。  私は邦楽部の部室に迷いなく直行した。 「これ、入部届です。よろしくお願いします!」  入部届を差し出すと、部長さんは信じられないというように目を見開いた。 「ほんとに? 入部してくれるの? ありがと~! ありがとうっ」  部長さんの目がだんだんうるんできたかと思うと、がばっと抱きつかれた。 「ありがとねっ。ほんとに……」 「あの……そんな大げさな……ぐえっ……あの、苦しいんですけど……」  ゲホゲホ言う私に気づいて、部長さんがあわてて離れた。 「ご、ごめん。うれしくてつい」  ふえ~。部長さんから解放されて、体の力を抜く。  でも、こんなに感謝されるのって、なんだかくすぐったいな。  部長さんの気持ちがうつったみたいに、うれしくて気持ちがはねる。 「じゃ、早速、練習しよっか。あ、そうだ! その前に! あのっ、その……」  部長さんが言いにくそうに、そっと私を見た。 「花瀬さんのこと、名前で呼んでもいい?」 「えっ?」 「せっかく部活仲間になったのに、苗字呼びだとよそよそしいなって思って。あ、なれなれしいのキライって言うんだったら、このままでいいんだけどっ。私のことも『夏芽』でいいからさっ」  部長さんが少し顔を赤らめながら早口で言う。 「いいですよ。みおりって呼んでください」  けろっと言うと、部長さんが拍子抜けしたような顔で頬をかいた。 「よっ、よろしくね。みおりちゃん」 「はい。夏芽先輩」 「~~~~~!」  夏芽先輩が口元を押さえて、しゃがみこんだ。 「……ど、どうかしました?」 「う、ううん。あの……部の後輩ができたのって初めてで、しかも先輩とか呼んでくれるなんて……夢のよう……!」 「え……」  ぽわーんとうっとり顔の夏芽先輩。  どう返していいか分からずにいると、夏芽先輩がスッと立ち上がった。 「さて、みおりちゃん。一面しかないから、私と交互に練習しよう。先、弾いてみていいよ」 「は、はい……」  いきなり、普通モードに入った夏芽先輩。  とまどいながらも、お筝の前のイスに座って、ポケットから出した爪をはめる。  息をはいてから、おばあちゃんに教えてもらってる現代曲を弾いてみた。  楽譜を持ってきてないから、うろ覚え。  やっぱり押手がうまくいかなくて、へっぽこな音が出る。あぁ、まだまだ練習不足だなぁ。  でも、途中からは大好きなメロディで指が勝手に動く。  歌うように弾きなさいって、いつもおばあちゃんに言われてるところ。  一章だけ弾いて、顔をあげると、夏芽先輩がキラキラの顔でそばにきた。 「やっぱり、すっごいうまいね! あらためてびっくりしちゃった」 「いや、そんなことないです……」 「すごいなぁ……うう~! 私、がんばらなきゃな~。部長なのに下手だなんて」  夏芽先輩が頭をグシャグシャかきむしる。  あー……せっかくのきれいなストレートの髪がボサボサになってるよ。  ……でも。  なんか、まっすぐな先輩だなぁ。  優しくて、素直で。いい先輩で良かった。
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