113人が本棚に入れています
本棚に追加
稜太郎は掠れた声でもう一度「ごめん」と言うと、悠希の首元にうずめるように鼻先を押し当てた。繰り返し首筋に当たる熱い吐息に、錯乱していた気持ちがじょじょに鎮まっていく。
「も……だいじょ、ぶ……だから……」
しゃくりあげていた身体も落ち着き、水分を含んだ声で稜太郎に呼びかける。頰に当たる髪の毛が小刻みに左右に揺れた。
「いや、大丈夫なわけねえよ。ごめん、怖かっただろ……」
一向に顔を上げようとしない稜太郎は頑なで、何度大丈夫と言っても納得する様子はない。悠希を泣かせてしまったということに稜太郎自身がショックを受けているようだった。
たしかに稜太郎の言動で泣いてしまったことは事実だけれども、稜太郎の本意じゃないことはもう充分に伝わった。
稜太郎に少しでも罪悪感を減らして欲しい。悠希はしばらく逡巡して、言おうかどうか迷っていたことを口にすることにした。
「あのね、稜太郎。襲われたのはちょっと、怖かったけど……でも……」
「でも?」
稜太郎は身体を離し、覗き込むように悠希を見た。不安げに揺れる瞳は後悔がたっぷりと滲んでいる。
「ちょっとだけ、興奮も、したから……」
最初のコメントを投稿しよう!