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「ゆ……」
稜太郎は目を瞠り、まばたきを忙しなく繰り返している。
「稜太郎は怒ってたけど、でも優しくて……。俺のこと痛めつけたいわけじゃないんだなってわかったから……だから……俺も気持ちよくなったっていうか……」
自ら暴露しながら、何を言っているんだと顔が熱くなっていく。
「も、こっち、見ないで……」
首を横に向けると、再び抱きしめられた。稜太郎の腕がぎゅうぎゅうと悠希の身体を締め付ける。苦しくて、でもその苦しさが嬉しかった。
「ありがと……ほんとごめんな」
「ううん。俺もごめん。ちゃんと三田村さんとのこと報告すべきだったね」
自分にとって取るに足らないことでも、誰かにとっては見逃せないことがある。たった一つのボタンのかけ違いが、いつの間にかとんでもないズレを生んでしまう。だからこそボタンをかけ違えていないか、常に確かめ合う必要がある。
「いや、俺も溜め込まずに、素直に悠希に訊けばよかったって今なら思う。ごめん、これはただの言い訳だけど、三田村さんから悠希のことを聞いたタイミングが悪かった」
「そうだよね。出番前じゃあね」
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